はばたけ バンのおにいちゃん メイン画像 著者:とうごうなりさ
はばたけ バンのおにいちゃん メイン画像 著者:とうごうなりさ

ぼくは、もうじきおにいちゃんになる。
まだ茶色いけれど、もう羽も生えそろっている。
でも、とぶのはへたくそなんだ。

「ぼく」(主人公のバン)の画像

どんな絵本?

バンのひな

ぼくが弟を守るんだ!!

弟妹の面倒を見る水鳥バンの“おにいちゃん”
飛ぶ練習をし、巣作りや餌集めを手伝い、ときには天敵から弟たちを守る。
“おにいちゃん”が成長する姿をやわらかくも力強く描いた版画の絵本です。

シーン紹介1



シーン紹介1_お母さんにお腹が空いたというバンのおにいちゃん

シーン紹介1


「ねえ、お母さん、おなかすいちゃった。
いっしょに食べに出かけようよ」
「お母さんは、今日からたまごを、あたためないといけないの。
ひとりでさがしに行っておいで。もう、おにいちゃんなんだから」

このごろいつもこれだ。
「もう、おにいちゃんなんだから」って。

シーン紹介2


シーン紹介2_巣作りに必要な草を運ぶバンのおにいちゃん

シーン紹介2


ぼくは、さっそく草をはこんだ。
それなのに、お母さんにもおこられた。
「もうちょっと長いのをもってきてちょうだい。みじかすぎるわ」
それから、

その日はずっと草あつめをした。
夕方、お父さんが、よくがんばったなと、
おいしいミミズをくれた。

シーン紹介3


シーン紹介3_卵を温める親鳥と飛ぶ練習をするバンのおにいちゃん

シーン紹介3


その間、ぼくは、ひとりでずっととぶれんしゅうをしていた。
羽をバタバタさせながら水の上を走る。
でも、そこからとびたつのはむずかしい。

お父さんみたいにカッコよく
とびげりしたいなあ。

シーン紹介4


シーン紹介4_雛に草をあげるバンのおにいちゃん

シーン紹介4


いちばん大きく口をあけたヒナに、
お父さんが、やわらかい草をあげた。
もらいそこねた、ほかのヒナは、まだ大きな口をあけている。
ぼくも水草をとってきてあげてみた。
そうしたら、すぐに1羽がパクッとのみこんだ。

ぼくがあげた草、ちゃんと食べてくれたよ。

バンを知っていますか?

バンの成鳥のイラスト

クイナ科の水鳥「バン」は、公園の池や湖の岸辺など、私たちの身近な水辺で生活しています。でも、わりと臆病な鳥で、あまり人前に出てきてくれないので、見たことがある人は意外と少ないかもしれません。バンでは、最初に巣立った幼鳥(この絵本では“おにいちゃん”)が新しく生まれたヒナたちの世話をするというちょっと変わった生態が知られています。この絵本は、そんな実際の生態をもとに、著者の観察や監修チェックを得て完成しました。絵本の巻末には監修者、上田恵介先生による解説文も掲載しています。

身近な生き物に目を向けてみよう!


バンの成鳥のイラスト

「パンダやキリンやゾウ―、そんな、遠い外国に生息する動物や動物園の動物たちだけでなく、日本の身近にいる生き物にも目を向けてほしい」そんな想いから誕生したのが『はばたけ!バンのおにいちゃん』です。バンという生き物を知らない人にも楽しんでもらえるように、「単純にお話として読んでおもしろい絵本」「お話としておもしろいだけでなく、背景にある生き物の生態や環境はしっかり嘘のない絵本」を目指しました。主人公のバンの“おにいちゃん”の奮闘ぶりをご堪能ください。そして、この絵本を通して、身近にもちょっと変わった生き物がいることを知ってほしいと思っています。さらに、この絵本をきっかけに身近な生き物にもっともっと興味を持ってもらえるとうれしいです。

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バンのおにいちゃんの表紙

はばたけ!バンのおにいちゃん

作:
とうごう なりさ
監修:
上田恵介
仕様:
AB判・上製・34ページ・フルカラー
定価:
1600円+税
ISBN:
978-4-910815-09-1 C8771
発売日
2022年9月
           

作者紹介

作:とうごう なりさ(東郷 なりさ)
東京農工大学農学部を卒業後、イギリスのケンブリッジ・スクール・オブ・アートで絵本や児童書の挿絵を学ぶ。2019年イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選。主な絵本に『じょやのかね』『さくらがさくと』『ハクセキレイのよる』(「ちいさなかがくのとも」2022年2月号)がある(以上、福音館書店)。イラストを担当した絵本に『Magnificent Birds』(英 Walker Studio)『はりねずみともぐらのふうせんりょこう』(福音館書店)などがある。
監修:上田恵介
理学博士。鳥類を中心とした行動生態学、進化生物学を専門とする。立教大学理学部生命理学科教授、日本動物行動学会会長、日本鳥学会会長を歴任。現在、立教大学名誉教授、公益財団法人日本野鳥の会会長(第6代)、公益財団法人山階鳥類研究所特任研究員。